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経営者インタビュー

代表取締役社長 襟川 陽一

株式会社コーエーテクモホールディングス
代表取締役社長
 襟川 陽一

コーエーテクモグループでは、3ヶ年中期経営計画のもと、新たな挑戦がスタートしております。創業経営者であり、またゲーム開発者でもある襟川陽一が、グループの戦略、ビジョン、さらなる成長への道筋について語りました。

コーエーテクモのビジネスモデルとは?

――コーエーテクモの強みについて教えてください。

今までにない新しい面白さを創造してきたこと、これに尽きます。「信長の野望」「三國志」などの歴史シミュレーションゲーム(歴史SLG)では、「歴史SLGといえばコーエーテクモ」といわれるまでになり、有力IPとして現在も収益に貢献しております。「無双」シリーズも同様です。かつてないアクションゲームの創造を目指したもので、歴史と最新技術を融合し一騎当千の爽快感を実現いたしました。今や一つのジャンルとして認知され、シリーズ世界累計出荷本数は4,700万本を超えております。

――コラボレーションタイトルもヒットしています。

『ゼルダ無双』、『北斗無双』、『ファイアーエムブレム無双』など、当社の開発ノウハウとパートナー様の有力IPを組み合わせて、新たな面白さを創造しております。コラボレーションは、両社のゲームのファン層を広げるWin-Winの手法です。パートナー様から当社の品質・納期・予算への信頼は大きく、案件は増加傾向にあります。現在は『MARVEL ULTIMATE ALLIANCE 3: The Black Order』の開発が完成段階に入っております。

――新規IPでは『仁王』がグローバルで大ヒットとなりました。

『仁王』はグローバルで累計250万本以上販売することができました。新規IPの創造は、ゲームメーカーが発展していくために不可欠だと考えており、今後も『仁王』を超える新規IPの創造に力を注いでまいります。
一方で、既存IPの有効活用も重視しております。特に親和性が高いのはアジアで、『三國志11』のIPを許諾したスマートフォンゲーム『三国志2017』(国内では『新三國志』)は各国で大ヒットいたしました。 このように、当社グループはIPを軸とした総合的な発展を目指しております。

――新規IP、シリーズ、コラボの組み合わせが重要なのですね。

新規IPにチャレンジし、シリーズ・コラボを展開して成長を目指すことがコーエーテクモのビジネスモデルです。近年の新規IPやコラボの成功により、この方針に間違いはなかったと感じております。 また、最新技術の取り込みの速さも当社の強みです。当社グループは「新分野への挑戦」を基本理念の1つとしており、ゲームハードと同時発売のタイトルなどに積極的にチャレンジしてまいりました。

代表取締役社長 襟川 陽一

コーエーテクモの高収益性の秘密

――営業利益率30%を実現する取り組みとは?

品質・納期・予算の管理、つまりプロジェクト管理の徹底が重要です。当社は全プロジェクトの黒字化を目指しております。目標に対する達成状況が厳しい場合、そのプロジェクトを取りやめることもあります。

――開発者には厳しい予算管理が求められますね。

面白いゲームができても利益が出なければ意味がありません。プロデューサーには、クリエイターと同時に経営者としての視点を持ち、予算、特に利益と納期遵守に対する責任を負うことを求めております。開発規模が年々大きくなっているため、品質を上げる為に予算を効率的かつ効果的に使うスキルも重要です。

――経営者としての視点をどのように育成するのですか?

プロジェクト損益を公開して常に予算の執行状況を意識するよう指導しております。品質の達成状況についても適宜、評価をフィードバックしております。また、全社的な視点を育てるため、プロデューサー向け決算説明会の開催により決算や年度予算の共有を実施しております。

コーエーテクモの将来像

――今後の戦略は?

グローバルIPの創造と展開です。グローバル市場に向けた新たなIPを創造し、多方面にIPを展開して、IPを軸とした総合的な発展を目指します。
当社の強みであるシリーズタイトルやコラボタイトルを創造する戦略は堅持したうえ、グローバル市場に向けて500万本級のAAAタイトルにチャレンジし、グローバル企業としての成長ステージに上がりたいと考えております。『仁王』を世界で250万本を販売したことで、その道筋が見えてまいりました。
スマートフォンゲームでは、当社がIPを許諾した『三国志2017』は、全配信地域合計ですでに月間売上20億円を超えております。IP許諾タイトルで得たノウハウをもとに、自社タイトルでも月商10億円以上を目指します。
また、関心が高まっているeSportsにも積極的に取り組んでまいります。

――グローバルマーケットがより重要になりますね。

パッケージゲームの販売本数における海外比率は、2019年3月期には57%に達しました。海外ファンからいただく熱い支持をひしひしと感じております。以前は国内タイトルを海外現地向けにローカライズする方法に主軸を置いておりましたが、今後は『仁王』のように全世界同時発売を標準にして、海外ファンのご期待に応えたいと考えております。

――利益還元の基本方針は?

当社グループは9期連続で最高益を更新し、8期連続で総配分性向50%以上の配当を実施しております。株主様への利益還元を最重要政策のひとつとして位置づけ、今後も積極的に実施してまいります。

コーエーテクモと社会との関わり

――ガバナンス強化への取り組みは?

エンタテインメントやITの業界で実績ある方を社外取締役に選任し、選任人数は2名から3名に増やすなど、社外取締役と活発な意見交換を行っております。余剰資金のマネジメントについてはポートフォリオを取締役会で報告し、社内・社外の取締役の意見を反映させております。

――社会貢献はいかがですか?

学術振興活動への支援、国内外で発生した災害への義援金支援、地元の学校に「まちの先生」として講師を派遣し、ゲームクリエイターの職業教育活動を行うなど、社会貢献を継続的に行っております。
また、当社グループでは、エンタテインメントコンテンツを創発する活動自体を社会貢献と捉えております。コーエーテクモの精神は「創造と貢献」です。最高のコンテンツで得られる最高の感動で世界中のゲームファンに貢献し、新たなコンテンツや技術創造の先導により社会や経済の発展に貢献し、ひいては世界中のお客様の心を豊かにすることがまさに当社グループの存在意義だと考えております。

――「働き方改革」への取り組みは?

フレックスタイム制や効率的な業務遂行の奨励、ノー残業デーでの早帰り励行など、様々な施策を実施しており、グループ全体の有給取得率は72.5%と厚生労働省発表の世間平均の約50%を大きく上回っております。また、行動規範を周知徹底するなど社員の教育に力を入れております。 当社グループは「社員の福祉の向上」を基本理念の1つとしており、人を大切にする文化が根付いているのです。

代表取締役社長 襟川 陽一

次世代のコーエーテクモに向けて

――次世代への権限委譲は?

段階的に進めております。現在の中期経営計画は、コーエーテクモゲームス社長の鯉沼や専務の早矢仕など次世代経営者層として期待するメンバーが中心となって策定いたしました。

――横浜のみなとみらい地区に新拠点を建設中です。

約1,600人を収容可能なオフィスとライブハウス型ホールが2020年1月に竣工予定で、社員の多くが集合する新たな開発拠点となります。ライブハウス型ホールでは、ライブイベントやeSportsなどを展開していく予定であり、グローバルでエンタテインメントを発信する企業グループとして、さらなる発展を目指してまいります。

――ゲームクリエイターとしての抱負は?

これまで多くの技術革新を目にしてきました。特に近年の進歩は著しく、30年前には想像すらできなかった表現や楽しみ方が現実のものとなっております。若手社員は、ネットのほか様々な先端技術の恩恵の中で成長してきた世代です。かつてない素晴らしいアイディアを次々と生み出してくれることを期待しております。
ゲーム開発への意欲はまったく衰えていません。現在、AIをさらに強化したゲーム開発に力を入れており、ゲームファンの方々へ早く届けたいと考えております。是非ご期待ください。これからも「世界一のデジタルエンタテインメントカンパニー」の実現に向けて、皆様をあっと驚かせる、新しい面白さにあふれるコンテンツを創造していきたいと考えております。

代表取締役社長 襟川 陽一

※本記事の内容は、2019年5月時点のものです。

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